断酒を継続するということ。スリップしてしまった時の心の持ち方について・・

捕鯨船

昨日、そして一昨日と「アルコール問答」について書いてきました。

アルコール問答 (岩波新書)

この本の中で、もう1つ心に刺さったシーンがありましたので、今日はそれを記事にしたいと思います。

アルコール依存症のご主人(Nさん)が奥さんと二人三脚となって断酒に取り組んでるというストーリーです。

無事断酒が2ヵ月継続し、奥さんも「この人が酒を止めることが出来たなんて奇跡です。本当に信じられない」と先生に感謝しきりでした。

ちなみにその時の様子はこちらです。

(断酒再開から1ヵ月が経過。改めてこの1ヵ月を振り返ってみる・・)

ただ、そのまま無事に酒と永遠に縁が切れるかと言うと、それほど甘くはなかったようです。

それから更に1ヵ月が経過した頃のことです。

奥さんと一緒に現れたNさんの顔を見たとき、何が起こったか、ぼくにはすぐ分かった。

奥さんは涙さえ浮かべている。Nさんは神妙な顔だ。

「すっかり前と同じです。ああいやだ。毎晩酔っ払って帰ってきて、さかんに悪態ついて、世話をやかせて、そして目が覚めれば「覚えてない」なんです」

-「アルコール問答」より-

断酒3ヵ月目にして、とうとう旦那さんは再び酒に手を出してしまいました。

本人も罪悪感で一杯の様子ですが、それ以上に「奇跡が起きた」と信じきっていた奥さんの落胆は半端ではありません。

断酒が何年も継続している他の人達と比較して、旦那のだらしなさを殊更に責め立てます。

「奥さん、ご主人が、ほんとうにだらしない人だと思ってられますか」

「ええ」

「そういわれるのは、だれかと比較しているからでしょう」

「ええ、ほかの人たち、ちゃんと我慢している人たちとです。診察室で待っているあいだ、いっしょの皆さんとお話してましたが、1人の方は、もう1年間もやめておられるというじゃないですか。もう1人の方なんて3年もやめておられるそうです。皆さんご立派です。それに比べてうちの主人は、なんとたったの3ヵ月しか続かなかった」

-「アルコール問答」より-

私もこの気持ちは痛いほどよくわかります。

実際に断酒半年でスリップしてしまった際は、「断酒が長く続いている人達と比べて、なんて自分は意志が弱いんだ」というふうに、ウダウダと落ち込んでいました。

でも物事は考え方、見方によって、前向きに捉えることも充分に可能だということを、この先生が教えてくれます。

次のように夫婦に語りかけました。

「ああ、あの人たちと比べたんですか。あの人たちとくらべれば、そりゃあ、たったの3ヵ月といいたくなりますわなあ。でも、あの人たちの、今だけを見て比較してはいけませんよ。今回こそ長く続いていますけど、あの人たちだって、これまで何回もやめたり飲んだりしていたときもあるんです。ぼくはご主人をだらしないとも、だめな人間とも思いませんよ」

「Nさん、あんたは、これまで最高、幾日間、お酒をやめたことがありましたか」

「恥ずかしながら、3日が最高でした」

「えったったの3日?」

「へえ、これまで最高3日しかやめられなかった人が、今回、3ヵ月もやめていたんですか。驚いたな。よく頑張った、と思えませんか」

-「アルコール問答」より-

確かに面と向かってこのように言われたら、私も「3ヵ月も酒を止めていた自分を褒めてあげてもいいのかな」という気持ちになりそうです。

そして「次はこの3ヵ月という自己記録を更新出来るように、もう一回頑張ってみるか」というふうに前向きな気持ちを持てるようになるかも知れません。

現在、私自身もアルコール外来に通っていて、定期的に先生に話を聞いてもらっています。

そこで先生はいつもこのような物言いをします。

「今自分の意志で薬も使用しながら断酒が継続出来ているのは素晴らしい。でも最悪のケース、今後また酒に手を出してしまうことがあるかも知れない」

「でも、それでもいいんです」

「そこから、また改めて断酒に取り組んでいけばいいんです」

先週の診察では、新しい仕事が決まりそうだという話から発展して「これまでの半年以上仕事が続かない自分というようなものが、果たして新しい職場で上手くやっていけるのか」というような不安についても色々と話を聞いてもらいました。

その時の回答も同様です。

「確かに、新しい職場で色々と困難があるでしょう。そこで頑張れればそれに越したことはない。ただ最悪、そこでまた上手くいかなかったとしてもそれはそれでいいんです。そこからまた一歩一歩進んでいけばいいんです」

これは何も「断酒においてスリップを奨励」したりだとか、「嫌な職場だったらすぐに辞めていい」だとかを言っているのでは決してないと思います。

何事においても一番もったいないのが、起きてしまったことに対して後悔やら自己嫌悪やらで全く前が見えなくなり、更に蟻地獄の奥深くに嵌まっていく、そして貴重な時間だけがドンドン過ぎ去っていってしまう、そうした事態だけは絶対に避けて欲しいということではないでしょうか。

私自身もこの1ヵ月を振り返ってみると、まさにこのことが当てはまります。

自分では殊勝に反省しているつもりだけれども、それが結果的に「ただ否定的な感情に支配されて何も行動を起こせないでいる自分」になってしまっている。

こうして無為に過ごしたあまりにも、あまりにも長い時間というものが一番もったいなかったと痛感します。

なお、そうした悶々とした思いについては、こちらでも記事にしていますのでよろしければご覧下さい。

(「吉原物語15」そして遂に人夫の仕事に別れを告げる時が・・)

 

最近耳にしたのが

「事実は1つだが、その解釈は無限にある」

という言葉です。

まさにその通りだと思います。

「断酒をスリップしてしまった」という事実に対して、「自己否定」の解釈を加え、更に酒浸りの日々に突入してしまうのか、

それとも

「断酒は途切れてしまったけれども、この間3ヵ月も酒を止めることが出来た」という肯定的な解釈をすることによって、もう一度断酒にトライするという前向きな気持ちを呼び覚ますか。

ここが最も重要な分岐点なのかも知れません。

私自身、肝に銘じます。

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