「吉原ソープ物語 3」日給7,000円のうち、仕事終わりに貰えるのは、たったの2,000円・・・ 会社に搾取される日々。貧困ビジネスの餌食に・・・

前回記事(「吉原ソープ物語 2」人夫としての初仕事が始まる。産業廃棄物処理場で、ホコリまみれになりながら酒代を稼ぐ日々・・)からの続きです。

仕事を終え、皆を乗せたステップワゴンが事務所に到着しました。

いよいよ、待ちに待った日当の支給です。

産廃処理現場での仕事は日給が7,000円でした。

ただ当然ながら7,000円全額が渡される訳ではありません。

毎日仕事の後に渡されるのは2,000円です。

つまり2,000円でその日の晩飯、そして翌日の朝飯と昼飯を賄わなければなりません。

更に私に限ったことではなく、人夫という人種はほぼ例外なくタバコを吸います。

それもかなりヘビーな人も多いです。

私は一日1箱程度でしたが、そのタバコ代、そして何よりも大切な晩酌代も2,000円の中からやり繰りしなければなりませんでした。

ちなみに実際にどのようにやりくりしていたかと言うと、まずタバコは安い「わかば」にしました。

当時の価格でたしか250円くらいだったと思います。

朝飯は食べません。

現場での昼飯は菓子パン2個で、250円くらい。仕事中のジュース代が200円。

そして大事な大事な晩酌代は発泡酒と缶チューハイで500円程度、ツマミと弁当代で700円程。

合計して何とか2000円以内に収めるというような生活を送っていました。

ところで日当7,000円のうち、その日に支給される2,000円以外の5,000円の行方についても触れておきます。

その5,000円のうち、毎日2,000円が寮費として差し引かれます。

これは仕事が休みの日も当然のように引かれます。

そして残りの3,000円から税金と保険代を控除された額が半月に一度まとめて支給されます。

週6日フルで働いた場合、大体15,000円~20,000円くらいの支給額になります。

Sさんは給料が出ると、バスに乗って5円スロットの店に打ちに行っては負けてを繰り返していました。

私は休みの日は午前中から部屋で酒を飲んでいました。

仕事は基本月曜日から土曜日まで、日曜日は休み。

上手くいくと週6日働けます。

ただし朝出勤したからと言って、必ず仕事にありつける訳ではありません。

人夫が多い日は仕事がないと言われ、帰されることもあります。

人夫は全員が寮に入っている訳ではなく、自宅から通っている人夫もいました。

我々のような寮住まい組は会社側から見ると貴重な金ズルです。

毎月6万円(2,000円×30日)の家賃を納めてくれる上客のため、仕事の斡旋という意味では自宅組よりも優遇されていました。

当時寮には私を含めて5人の人夫がいました。

一人あたり寮費が月6万円とすると合計で30万円です!

今にも倒れそうな廃屋の一軒家がそれだけの家賃を生み出す訳です。美味し過ぎる商売です。

更に言うと、そもそも日当7,000円の部分でかなり鞘が抜かれている訳です。

実際の会社への請求が仮に12,000円だとしたら、それだけで5,000円の儲けが発生している。

更に寮生はプラス2,000円の寮費もふんだくれる。

会社側からしたらこの人夫出しという仕事は相当に旨味のある、笑いの止まらないビジネスと言えるのでしょう。

当時博多近辺のワンルームマンションの家賃は手頃なところだと3万円代くらいからありました。

それに対して冷暖房もない小汚い廃屋の一室の家賃が月6万円というのは、なかなかに解せないものを感じました。

そうした話をよくSさんにしたのですが、Sさんはさすが大人です。

「手持ちの金もなく、身よりもない我々がすぐにそういう物件に入居出来る訳じゃない。着の身着のままの我々を受け容れてくれたこの会社に対して有り難く思わないといけない」

というふうに諭されたものです。

ところで人夫の多くは運転免許を持っていません。以前は持っていたが、どこかの時点で失効してしまったという人が大半です。

Sさんもそうした免許失効組の一人でした。

Sさんに限らず、そうした免許失効組の人達も過去に良い時期が必ずあったはずです。

家庭を持ち子供もいて、仕事も社員としてバリバリ働いていた。

ただ、どこかで人生につまずいて、転落に歯止めが掛からなくなってしまう。

結果家族とも別れ、友人も失う。

そしてなおも人生の坂道を転がり続け、その途上で運転免許も失効してしまう。

その結果、まともな職業に就くのが難しくなり、とうとう辿り着いたのがこの人夫出しの職場というのが典型的なパターンです。

運転免許がなくなると本当に何も出来ません。

私もこの時期、転落人生のど真ん中を突き進んでいましたが、不幸中の幸いだったのは免許を失効せずに済んだことです。

そのおかげで、この後ソープランドのボーイという時期を経てではありますが、今何とか一人暮らしもしながら、人生逆転へ向けて、復活の狼煙を上げようという状況まで戻ってくることが出来ました。

人生のどこかでつまずき、その途中に運転免許も失効してしまう。

そして最終的に選択肢のなくなった人達の辿り着く先が、この人夫出しという世界。

そう考えると、これは立派な貧困ビジネスの一種なのかも知れません。

ただ当時は、私自身もこうした状況に身を置きながらも、会社側に対して「搾取ばかりしやがって」というような気持ちは殆どありませんでした。

確かに高い寮費に対する不満も少なからずありましたが、ただそれでも、とにかく仕事がもらえて、住まいもあって、酒も飲めてという生活を送ることが出来るということだけでも、本当に有り難く感じていました。

ちなみに人夫出しの会社を幾つも渡り歩いてきたSさんの話によると、うちの会社は他と比べると、まだ良心的な方だったようです。

というのも私のような未経験者の場合、最初に仕事着や作業靴、ヘルメットなどが支給されます。

これらの費用は通常の会社では後日精算となり、翌月の給料から差し引かれます。

ただ、うちの場合は1ヶ月継続して働けば、これらの費用は全て会社側で負担してくれました。

また、うちの寮は食事の支給はなかったのですが、会社によっては朝・昼・晩と有無を言わさず食事の支給をする寮もあります。

そうした場合、通常の寮費とは別に、また食費で1日2,000円が差し引かれたりということになります。

更に更に、会社によっては週に3日くらいしか働けないところも普通にありました。

そうすると、もはや給料では寮費・食費が賄いきれず、日々会社に借金が貯まっていくようになります。

結果、逃げたくても逃げ出せない家畜のように飼い殺し状態になり、自由が全く奪われてしまう。

何とも怖ろしい話です。

そして人数の多い寮では、先輩の人夫が幅を効かせているところもあります。

そうした輩に毎日のように夜の宴会に付き合わされ、睡眠もロクにとれなくて困っているといったような話を聞くこともありました。

そうした色々な点から考えると、私の会社・寮はまだ恵まれていたように思います。

(次回へ続く・・)